Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2002: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本研究では,マレーシア・サラワク州における現地調査を中心にデータ収集を行った。具体的には,マレーシア最大の河川ラジャン川の上流域において,人の移動を中心とする社会的な動きについての調査を行った。 当該地域には,1960年代から70年代にかけて,インドネシア・カリマンタンから移住してきたクニャ人の集落が点在している。当時の移住の理由は,カリマンタン側における人口圧が高まり土地が相対的に不足したこと,砂糖や塩などの日常品購入の面でサラワクに居住する方が便利であったこと,そして,間接的ではあるが,1960年代後半のインドネシアとマレーシアの間の政治的緊張がこの地にも及んで,安定した生活を求めた人たちがサラワク側に流れたこと,である。 しかし,こうした移住の波とは別の動きが1990年代半ばから顕著になった。それは、サラワクの木材伐採企業が,当該地位に木に伐採キャンプを開き,インドネシアからの非合法入国者を重要な労働力として使用し始めたことによる。インドネシアのクニャ人のサラワクでの非合法就労は,1950年代から行われていたことではあるが,1990年代に入ってその数は激増し,国境付近の地域社会に大きな変化をもたらした。注目すべきことは,こうした非合法入国者が,60年代以降に移住してきた集落をベースとして,ラジャン川最上流域での就労活動を展開しており,国境を越える新たな人的ネットワーク形成しているという点である。しかし,そうしたネットワークの形成は,サラワクの木材伐採企業の動きや両政府の雇用政策に大きく依存しており,クニャ人の就労の地域的・内容的な多様性は失われている。 こうしたことから,越境移動と地域変化を見る場合に,従来の国境形成とエスニック・アイデンティティとの関係についての議論に加えて,政府の雇用政策や企業の動向が人的移動にもらたす影響をも視野に入れた考察を行う必要があると指摘できる。
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