Research Abstract |
平成13年度に引き続き,下記の3点に関する研究を行った。 1.本研究における「一般化」の理論的枠組みについては,オーストリアの数学教育研究者であるDorflerの一般化モデルを参考にしている。本年度も,昨年度の研究において提案した「Dorflerに基づく一般化分岐モデル」に関する理論的精緻化を図った。また,「分岐モデル」を用いて,「小数でわるわり算」と「分数でわるわり算」の理解過程の違いを一般化の視座から明確にした。つまり,前者の意味理解は「内包的一般化」に対応するのに対し,後者のそれは「外延的一般化」に対応しており,こうした一般化の質的相違が,「分数でわるわり算」の困難性の本質的な要因となっていると考えられる。 2.「分数でわるわり算」の指導の改善を図るために,次のような対案を提案した。つまり,立式のためには,「比較」のスキーマを前提とし,計算アルゴリズムの説明には,既有の数学的知識を仮定する教授学的介入である。対案に基づく教授実験を行った結果,その有効性が確認された。 3.「分数でわるわり算」の指導について検討するにあたり,その基礎的な作業として,算数科教科書の分析を行った。その中で,算数・数学教科書に現れる様々な数学的認識の質が問題となった。そのため,本年度の研究では,算数・数学教科書を分析するための具体的方法を提案しながら,算数・数学教科書本文に現れる数学的認識を7種に類型化した。その上で,現代化学習指導要領および現行の学習指導要領に準拠した小,中学校の算数・数学教科書を対象としながら,実際に教科書の記述を比較検討した。その結果,「算数」と「数学」における認識の違いや経年的な変化を指摘することができた。
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