Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
家族性大腸腺腫症(FAP)の原因遺伝子APCは散発性の大腸癌のイニシエーションに関与したがん抑制遺伝子である。そのマウスホモログに変異を導入したAPC580Dでは個体当たり平均160個の消化管腫瘍が発生し、FAPのモデル動物として大腸癌発がん機構の解明に有用である。APC580Dの亜系であるC119系統では平均3個と腫瘍発生の抑制が観察され、これはC119ではAPC遺伝子変異とは別の突然変異が発生した結果と考えられた。腫瘍発生のgate keeperであるAPCに変異が存在しても他の遺伝的要因によって、その表現型に変化を生ずる制御遺伝子の存在が複数明らかにされている。C119系統でも新たな制御遺伝子の関与が示唆される。C119をB6系統へと戻し交配を進めると約1%の頻度で再び100を越す腫瘍が発生するマウスが得られ、C119の突然変異は第18番染色体上のAPC遺伝子から約1cMの領域に存在するものと推定された。B6と129の遺伝的多型性を利用して、B6への戻し交配によって制御遺伝子座の絞り込みを行ない、約1cMの領域に候補遺伝子座をマップした。この領域を含むBAC DNA contigの作成を目指すと同時にサンガーセンターのマウスゲノムインフォーマティクスを利用して、候補領域の絞り込みを行った。この候補領域は物理的には4Mbの大きさであり、さらに、この領域から得られた新たな遺伝的多型マーカーにより候補領域の絞り込んだ結果、その領域を約3Mbにまで絞り込むことに成功した。候補領域には15個以上の候補遺伝子が存在すると推定され、それらの遺伝子変異や発現解析を行なったところ、ひとつの候補遺伝子に欠失変異を見出した。更に、この候補遺伝子の機能は大腸腫瘍形成に必須であることが示され、この遺伝子が新たな制御遺伝子である可能性が示され、これを標的とした分子治療の可能性が示された。
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