Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Research Abstract |
本研究は,縁海のような規模の小さい閉鎖海域の物質循環の特徴を明らかにし,それらを縁海間で比較することによって,グローバルな海洋環境について斬新なアイディアを追究する新しい試みである。代表的な縁海として日本海とスールー海にターゲットを絞り,海域調査とデータの解析を進めた。本年度は東大海洋研究所白鳳丸のKH-02-4航海(02年11月7日〜12月18日)に乗船しスールー海の調査を実施した。スールー海は,日本海のような自前の深層水形成機構を持っていない。しかし,スールー海の深・底層水は決して無酸素状態ではなく,何らかのメカニズムによって酸素の補給路が維持されていること,すなわち海水の上下混合が細々ではあれ存続していることを示している。このメカニズム解明にむけ,スールー海および隣接するセレベス海と南シナ海で海洋表面から海底直上に至る詳細なCTD観測とニスキンX採水器による海水採取を行った。船上及び陸上の実験室において海水中の化学成分濃度および同位体比を計測した。1996年のデータと比較すると,スールー海の深・底層水の酸素濃度は明らかに減少し,ポテンシャル水温は増加していることが明らかになった。これより1996年〜2002年の間,スールー海における海水の鉛直混合は不活発であったと推定できる。他の化学・同位体データも総合すると,スールー海の海水循環における重要な構成要素を以下のように指摘できる。 1)南シナ海からミンドロ海峡を経て常時流入する中層水。スールー海の底層に達するほど高密度ではない。 2)数十年ごとにミンドロ海峡を経て流入する高密度水。何らかの原因(例えば巨大台風の通過あるいはグローバルな環境変化)で南シナ海の温度躍層が上昇し,大量の海水がタービダイトとしてスールー海深層にまで流入する。 3)スールー海海底から供給される地熱。底層水の密度構造を不安定化させ,深・底層水の上下混合を促進する。 これらの要因はいずれも日本海とは極めて対照的であり,日本海とスールー海は縁海の深層循環系という観点からみて両極端に位置すると結論できる。
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