Research Abstract |
宇宙線とは宇宙を飛び交う素粒子や原子核の総称で,今年ノーベル賞を受賞された小柴先生達が観測された超新星からのニュートリノも宇宙線の1種である.本研究では太陽系の外から地球に飛来する高エネルギー宇宙線を,科学館,中学,高校,高専,大学などに設置した簡易型装置(「宇宙線ステーション」(CRS))で観測する.観測したデータはインターネットで中央局に送信・公開し,誰でも宇宙線飛来情報がリアルタイムで得られる.中学・高校生らがこの観測に参加したり,パソコンで宇宙線飛来情報を見たりすることにより,物理に興味を持つきっかけとなることを期待している.特に,生徒たちが,学校で習う完成された科学とは違った本物の科学研究に参加し,それに触れる機会を持つことにより,授業とは違った貴重な経験を得ることができると考えている.海外ではすでに,カナダ・米国共同のNorth American Large Time Coincidence Array (NALTA)と呼ばれる類似計画が同様の目的で進行中である. 現在までに,観測装置は,大阪市立科学館,大阪府立泉大津高校,近大工業高専,大阪市立大学の4個所に配備し,12月から試験的にインターネットを通した観測を行っている.観測データの受信に必要なソフトウェアーはホームページhttp://mpu. hep. osaka-cu. ac. jp/~crs/からダウンロードできる.交信プロトコルにHTTPを使っているので,インターネットに接続されたパソコンさえあれば,どこからでも(ファイヤーウォールの中からでも)データを(送)受信することができる.ホームページでは解説なども整備しつつある.大阪市立科学館4階では,タッチパネル付ディスプレーを用いて観測データと宇宙線一般の解説を一般市民向け(小学生が多い)に展示している. 現在進行中の作業と今後の計画としては,まず観測網の拡大と本格的な連続運転をすること。また,受信データのディスプレーを汎用にし,生徒が見て楽しめるものに改良する.さらに,ITに興味を持つ生徒が簡単にディスプレープログラムをいじくれるようにすること,などを進めている.成果は2003年物理学会総会の物理教育分野で発表する.また,成果の論文の第一報はほぼ完成しており,1ヶ月以内に投稿する.
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