Research Abstract |
我々は,まずハムスター・プリオンの天然立体構造の安定性を残基レベルで評価し,プリオン活性型立体構造を発見し,その中間体の立体構造の特徴を高圧NMR法を用いて明らかにした。(Kuwata et al.Biochemistry,2002,Stanley B.Prusiner教授(1997年ノーベル賞)との共同研究)。 さらにマウスプリオン正常立体構造に基づき,立体構造を安定化し,異常構造への変換を阻止するための薬物をスクリーニングした(桑田一夫,蛋白質・核酸・酵素,2002)。50万種類の薬物をIn Silicoでスクリーニングし,候補薬数十種類に関し,スクレイピー産生細胞(スクレイピー由来の22LとChandler株、GSS由来のFK-1の持続感染細胞系)を用い,In Vitro実験を行ったところ,現段階で,異常構造形成を抑制する効果のある薬物が数種類見つかった。今後,更に追試を行い,確認してゆく予定である。 立体構造の判明したハムスター,マウス,ウシ,ヒトのプリオンで,ACD, NCIの各データベースをスクリーニングした結果,選択された薬剤は,かなりよく似た骨格を示したが,側鎖構造は種により微妙に異なっていた。この結果から,動物実験でプリオン抑制が確認されても,ヒトに対して有効かどうかは不明である可能性が示唆された。 さらに,非天然構造,特に上述の励起構造や正常2量体構造に対してもスクリーニングを行った。その結果,天然構造とは全く異なる構造を有する化合物が選択され,結合エネルギーもかなり低いものが得られた。その骨格は,In Vitro実験で有効性が確認されたキナクリン等の蛋白構造特異的蛍光プローブによく似た構造を取っていた。今後,これらの情報を基に,非天然構造の安定性に対するこれら薬物の影響を物理化学的に確認するとともに,In Vitro実験を推進してゆく予定である。
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