NMRを用いた遷移金属酸化物における軌道自由度の観測
Project/Area Number |
14038225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90176363)
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Project Period (FY) |
2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2002: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 軌道自由度 / 軌道秩序 / NMR |
Research Abstract |
遷移金属酸化物では、3d電子はよく知られているようにスピン・電荷・軌道の3つの自由度を持っている。これらの自由度の中で従来はスピンと電荷の物性に興味が持たれてきた。これは、軌道の自由度は、観測することが困難であり、また、スピン・電荷の自由度を介して現れることが多く、隠れた自由度とみなされることが多かったためである。しかし、最近、「軌道秩序」、「軌道量子液体」、「軌道波」などの軌道の自由度があらわに現れる現象が見つかり、強相関電子系の物理において軌道自由度が本質的に重要であると強く認識されるようになって来た。それにもかかわらず、偏極中性子散乱、共鳴X線散乱の実験以外に軌道物性を研究する手法がほとんどないのが現状である。本研究では、軌道物性の中でも最も重要な「軌道秩序」を核磁気共鳴(NMR)法を用いて観測する方法の確立を目指した研究を行った。特に、ペロブスカイト構造を持つチタン酸化物RTiO_3 (R=Y, Gd, La)の磁気秩序状態でのNMR測定を行い、得られたNMRスペクトルと軌道秩序を記述するモデル波動関数にもとづいて計算されたNMRスペクトルとの詳細な比較を行った。その結果、GdTiO_3では、YTiO_3と同じタイプの軌道秩序が起きていることを明らかにした。一方、LaTiO_3では、軌道量子液体状態が実現しているとする可能性と結晶場によって基底一重項が実現している可能性が理論的に指摘されていた。本研究では、大きな電気四重極相互作用を持つNMRスペクトルを観測し、この結果から後者の可能性が高いことを明らかにした。本研究を通じて、NMRが軌道自由度を観測する有効な手段であることを示すことができた。今後、本研究で得られた成果をもとに、NMRを用いた遷移金属酸化物の軌道物性の研究が進むものと期待される。
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Report
(1 results)
Research Products
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