Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
近年、電解質ゲルを用いた高分子ゲル・アクチュエータが注目されている。これは高分子ゲルの特徴により、従来のアクチュエータには無い柔らかな動きが可能な新規材料として期待されているためである。このような視点からゲルの力学特性を外部刺激により制御する研究を行った。電解質ゲル系の外部電場下での変形では、ゲル内部のイオンの運動と溶媒分子の動的な結合が、この現象に強く関与していると考えられている。本研究では電解質ゲルのダイナミクスを記述する方程式の導出を行った。また、数値計算を行い、電場による変形が、可動イオンの電極近傍への偏りによる浸透圧の効果と高分子ゲルから解離したイオンの電気浸透の効果によるものであることを明らかにした。また、電極近傍でのイオンの分布を解析的に求め、イオンの分布と電場印加時のゲルの変形曲率との関係を解析的に導いた。この結果から、電気容量の小さな単純な平坦電極では変形が極めて小さくなることがわかった。電極構造は樹脂状結晶を用いた電気容量の大きなものが実際の応用で用いられており、この理由がこの研究より明らかになった。ゲルの内部構造を制御し、ゲルの力学的特性を制御するという観点から、磁性粒子を分散させたゲルについての研究も行った。この磁性粒子を分散させたゲルに一定方向の強磁場を印加することによって分散した磁性粒子の磁気双極子をある方向に揃えることが可能である。このような磁性ゲルを作成し、ゲル内の超音波の速度を測定することで、弾性率の方向依存性を測定した。双極子モーメントと変形の方向が平行な場合には、磁性粒子の密度を増加と共に弾性率が減少し、一方、垂直な場合には増大する結果が得られた。このような弾性率の異方性を理論的に説明するために、磁性粒子間の双極子双極子相互作用の弾性率への寄与を考え弾性率を解析計算した。この計算から、各磁性粒子の双極子モーメント間の相互作用と変形による配置の変化により弾性率の異方性が生じていることが明らかになった。
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