Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Research Abstract |
1.30年来「クロロフィル(Chl)aの二量体」と推測されてきた酸素発生型光合成生物の系I反応中心P700の近傍にChl aのC13^2異性体Chl a'を検出し,調べたかぎりの生物種でChl a/a'のヘテロ二量体がP700を構成していることを明らかにした。これにより,少なくとも系Iコア色素-タンパク質複合体の分子構築に関する議論を刷新することができた。 2.光合成系で量子収率1の光→化学エネルギー変換を可能にしている機能分子間レドックス電位の絶妙なチューニングにつき,その一端を明らかにする目的で,系I反応中心P700のレドックス電位の直接計測を試みた。具体的には,ラン藻Synechococcus PCC6803のチラコイド膜を水溶液に縣濁させ,酸化スズSnO_2を作用極とした薄層電解セルによる分光電気化学計測を行った。その結果,ほぼ100倍量存在するアンテナ色素のスペクトル変化にほとんど妨害されない形で,P700の可逆な一電子酸化を反映するスペクトル変化を観測でき,ネルンストプロットから,P700のE°'値がChl aモノマーの値より約250mV負側の+540mV vs. SHEであることを確認できた。Fe(CN)_6^<3->などのメディエーターを用いない場合も,電子授受速度の低下によるスペクトル変化の遅れはあるものの,ほぼ同じE°'値が得られた。また,種々の光合成生物から単離した系I標品につき,Fe(II)/Fe(III)系を用いる簡便なレドックス滴定を行ったところ,高等な生物ほどP700のレドックス電位が高いことを伺わせる結果を得た。これは従来報告のない知見であり,詳細に検討する価値が大きいと考えられる。
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