Research Abstract |
我々は,ゾルーゲル法で合成した多孔質な二酸化チタンペレットを用いてエチレン,塩化ビニル,トリクロロエチレン(TCE),テトラクロロエチレンの光触媒分解反応を研究し,反応の途中で反応中間体から脱離した塩素ラジカルが付加反応を起こし,有害な塩素系副生成物が生成するという反応機構を提案している。この機構に基づけば,塩素ラジカルの触媒表面での生成を抑制できれば,有害な副生成物の生成を抑えることができると考えられる。そこで,本研究では,塩素ラジカルをトラップすると考えられる種々の金属粉を二酸化チタン粉末と均一に混合し触媒層の長さを固定して,流通型装置を用いてTCEの光触媒分解実験を行った。反応効率,無害化効率,副生成物であるホスゲンやクロロホルムの生成量,および触媒表面に残るジクロロ酢酸や塩化物イオンの生成量について調べた結果,銅粉を共存させることにより副生成物の抑制効果が顕著に観察できた。すなわち,銅の添加量が増加すると,トラップされる塩素の量が増大し,40wt%以上の銅の存在下ではほぼ100%塩素がトラップされることがわかった。さらに,銅の添加量の増加とともに,TCEの反応効率はわずかに減少するが,二酸化炭素への分解効率は増大し,副生成物であるジクロロ酢酸の生成量は低下した。これは,銅の共存により,塩素ラジカルの付加反応が抑制されたことを意味する。また,生成したホスゲンとクロロホルムの量は,銅を約50wt%共存させることにより,添加しない場合の50%に低下させることができた。銅の代わりに水酸化カルシウムを用いても同様な結果が得られたが,特にホスゲンの生成が大きく抑制できることがわかった。 以上のように,有害な塩素系副生成物の生成を抑制するためには,銅や水酸化カルシウムを共存させることが必要であることがわかった。本研究結果は,我々が提案している反応機構の妥当性を示す結果でもある。
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