Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
本年度は、主として史料の所在調査とその収集に当たる計画であった。はじめに、研究の対象としたい「近世における地方知識人の家」の所在を知る方法を考えた。近世のある地方での歴史を知るためのもっとも基本である、地方自治体が刊行したそれぞれの自治体史で目当てとするような「家」が、通史編に書かれてないか、あるいは史料編の史料としてそういう家の史料が収録されてないかを、都道府県史のレベルで調査した。その結果分ったのは、研究対象としようと考えているような「家」は取り上げられていないことであった。日本史の分野で、社会史の観点を導入した研究成果が発表されるようになって20年近い歳月が流れた。ところが、都道府県史レベルに反映できるような、近世の地域社会の中で教育者の再生産がどのようになされていたのか分析した研究成果はほとんど無いということだ。そこで、市町村史のレベルまで下がれば地域により密着した自治体史として記述があるかと思い、2年前に翻刻を出版した近世女性日記の筆者と親交のあったことが確認できる人が生活していた各地へ出かけ、県立図書館などで市町村史や郡誌を調査した。残念ながらこれも大きな成果はなかった。本年度の調査では、歴史研究では欠くことのできない史料を得ることの難しさが浮き彫りになった。しかし、来年度も、いくつか収集できた史料の解読・分析を進めながら、いましばらく史料調査を続けたい。