Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
種々の細胞増殖因子が慢性肺疾患(CLD)児の肺内においてどのように作用しているのかを知る目的で、培養ヒト胎児肺線維芽細胞を用いたコラーゲン合成測定系の確立を試みた。細胞には培養ヒト胎児肺線維芽細胞(ATCC HTB-157)を使用し、^3H-Prolineの細胞内への取り込みをコラーゲン合成の指標とし、flat-bed scintillation counterを用いたEenwickらの方法(BioTechniques 30:1010-014;2001)でコラーゲン合成能を測定し得た。さらにこの系を用いて、以下の知見を得た。(1)CLD児の気管吸引液を培地中に添加すると、濃度依存性にこの細胞のコラーゲン合成能が増加した。(2)この活性は培地に抗TGF-β抗体を添加することによって抑制された。(3)recombinant human TGF-βはこの細胞のコラーゲン合成能を増加させた。以上よりCLD児の肺内に存在するTGF-βが肺線維芽細胞のコラーゲン合成を増加させて線維化を促進することで、CLDの病態形成に関与している可能性が示唆された。次に、昨年度に確立したヒト胎児肺線維芽細胞培養系ならびにヒト肺胞上皮細胞培養系を用いて、これらの細胞増殖に対する各種薬剤(トラニラスト、デキサメサゾン、ゲニステイン、recombinant human HGF、抗TGF-β抗体)の作用を検討した。このうち線維芽細胞の増殖とコラーゲン合成を抑制し、かつ肺胞上皮細胞の増殖を促進したものはrecombinant human HGFならびに抗TGF-β抗体であった。CLDの理想的な治療薬は線維芽細胞の増殖とコラーゲン合成を抑制し、肺胞上皮細胞の再生を促進するものであり、これら2種の薬剤が将来CLDの治療薬になり得る可能性が示唆された。
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