「ゆるし」の心理に関する国際比較研究:日本・中国・韓国の比較
Project/Area Number |
14651023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
教育・社会系心理学
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仁平 義明 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10007833)
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Project Period (FY) |
2002 – 2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2004: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2003: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2002: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | ゆるし / 謝罪 / 加害 / 被害 / 中国 / 韓国 / 加害-被害側の非対称性 / 情状主義と厳罰主義 / 国際比較 / 日本 / 性差 / 文化 / 発達 |
Research Abstract |
なんらかの物理的・心理的・社会的な加害を行った相手を「ゆるす」ことに関する考え方・感じ方が文化によってどのように異なっているか、比較文化的な研究を行うことが本研究の目的であった。 第一に、ゆるしについての考え方の「非対称性」を明らかにするために、加害側と被害側の「ゆるし」に必要な条件の非対称性の質問紙調査を行った。交通事故事例、対人関係のもつれの加害-被害事例に関する二調査が大学生と成人社会人を対象にして行われた。結果からは、加害側は即時に相手と接触して、外形的な行動にあらわれた「ゆるし」を求める傾向があるのに対して、被害側は時間と距離とを置いて、相手の内的変容を「ゆるし」の条件として求める傾向があることが明らかになった。これらの結果は、日本文化に固有のものでもある可能性があると考えられた。しかし、異文化間のゆるしの条件についても、この加害-被害側の「非対称性」の問題は、考慮すべき大きな問題であると考えられる。 第二に、日本的ゆるしの思想に関して、研究協力者(桐原健真)によって、吉田松陰の「ゆるし」についての思想の検討が行われた。「ゆるしを求めるものの論理-「世の棄物」としての吉田松陰-」として本年発表される予定である。 第三に、日本、韓国、中国の大学生を中心とした対象者による質問紙調査の結果が比較され、どの文化でも、ゆるしには大きなジェンダー差がみられ、とくに、自己の感情の吐露、相手方の加害の意味への言及は、文化を超えて、女性において男性よりも大きなゆるしの条件であることが明らかにされた。また、日本の「ゆるし」条件は、当初仮定されていたよりも、被害の結果に依存しており、そのため厳罰主義に傾く傾向が示唆された。また、韓国が3国中最も被害が生じた情況に固有のゆるしの条件を重視し、情状を考慮するものであることが示された。このように、同じ東アジアに属して共通の文化的要素を有すると考えられがちな日本・中国・韓国の間では、日本がむしろ特異的な存在であることが示唆された。この東アジアの中での日本の特異性は、従来の比較文化の東西二分法的なアプローチが不十分であり、同じ東アジアでも、それぞれに固有な文化があることを前提にしたアプローチが必要であることを示していた。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)