Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
資料データの整理・解析を通じた実証的研究から、開設者別医療機関の市場構造的特徴および経営的成果には明らかな相違がクロスセクションおよび時系列のデータ分析から確認された。とくに医療法人と個人立の病院(私的病院と呼ぶ)と都道府県立などの公立病院との間に顕著な相違があり、日赤や厚生連などの公的病院はその中間に位置するものであった。これら市場構造的および経営的成果上の相違を踏まえて、開設者別医療機関のproperty rightsの内容差異を反映した行動仮説を提示し、その制度的および理論的検証を行った。研究成果によれば、私的医療機関と他の開設者医療機関における経済的誘因の差異を生じさせる制度的および理論的背景が解明された。それは、非営利性制約を弱める(私的病院の)社団医療法人という形態の存在、および診療報酬体系の歪みと非排他的な利得を生む診療報酬規制である。前者の社団医療法人では出資者が剰余金の獲得を可能とする要素を含み、したがって、現行制度の非営利性制約は出資者に対してproperty rightsを構成する権利の1つ(残余利益の請求権)を排除しない。つまり、出資者は現行制度のもとで残余コントロール権と同時に、残余利益の請求権をもつ可能性が示された。また後者の診療報酬規制では価格規制の分析を適用して、当該規制によるレントの発生を明らかにした。これら結果は私的医療機関のproperty rights内容、さらにその行動にも影響を及ぼすことになり、その意味では「残余利益請求権」の排除された「非営利」機関とは異なる行動を誘発することを示唆する。それが実証的研究で明らかにされた開設者別医療機関の医療サービス市場における構造的および経営成果的特徴の差異を示している。また、この結果は医療政策上においても開設者別医療機関の行動上の相違を考慮した政策を行う必要性が求められることを示唆する。
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岡山大学経済学部Discussion Paper No.57
Pages: 1-20
経済学会雑誌(岡山大学) 36巻,2号
Pages: 15-34
医療と社会 vol.14,no.3
Pages: 51-68