アジア・アフリカにおける貿易銀流通とその終焉についての比較史的研究
Project/Area Number |
14653010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Economic history
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (70186542)
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Project Period (FY) |
2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | マリア・テレジア銀貨 / ルピー / 円銀 / 貿易銀 / 一国一通貨原則 |
Research Abstract |
大英図書館と英国国立公文書館での資料調査により、オーストリア政府発行のマリア・テレジア銀貨が20世紀前半において、エチオピアと紅海沿岸で大量に流通していた実態を明らかにすることができた。この地域では同銀貨が他の通貨に対して過高評価されていた。たとえばインド洋沿岸で広く流通しているルピー銀貨も、この地域ではより銀品位の低いマリア・テレジア銀貨に対して過低評価されるのが常であった。この地域を支配しようとするイタリアとそれを阻もうとするイギリスはマリア・テレジア銀貨を独自に鋳造することになる。 イタリアやイギリスは、諸通貨を一定の公定比価の下で流通させようとするが、マリア・テレジア銀貨は常に高く評価されるなど、公定比価から手乖離した実勢比価を放任するしかなかった。このエチオピア・紅海沿岸では、第二次世界大戦期においても、一国一通貨原則とはほど遠い状態にあったのである。 イギリス側資料から浮かび上がるマリア・テレジア銀貨流通の実態は、面としての流通ではなく、都市を結ぶ線としての流通である。各地域に密着した下層市場では、銅貨などが独自の相場で流通しながら、諸上層市場の間を輪のように結ぶ通貨として機能していたのである。その環状の流通の反対方向にさまざまな商品が移動していった。それは、円銀の中国東南沿岸での流通と共通する構造である。現地通貨の自律性を保持しながら地域間の決済を果たす、貿易銀の歴史的性格を明示してくれている。
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Report
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Research Products
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