Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
中枢神経を取りまくミエリンの中に存在している神経再生阻害蛋白としてMyelin-associated glycoprotein(MAG)、Nogo、oligodendrocyte myelin glycoprotein(OMgp)が同定されている。これらはニューロトロフィン受容体p75を介してsmall GTPaseであるRhoを活性化し、神経突起の伸展を抑制することを明らかにした。中枢神経の再生を目指した治療を考える場合、ニューロトロフィン受容体p75に焦点を絞ることで最も高い効果が期待される。本研究ではニューロトロフィン受容体p75の機能を阻害した動物における神経再生の動態を検討し、p75の機能を阻害することで中枢神経が再生するという仮説を検証した。p75ノックアウトマウスに脊髄損傷を加えたところ、有意な死亡率の上昇を認めた。これはp75が全身において欠損しているために、疾病に対する抵抗力が低下しているためではないかと考えられた。そこで損傷周囲部のみで選択的にp75を阻害する方法として、機能中和抗体を選択した。脊髄損傷後、4週間にわたり損傷局所に坑体を投与したところ、脊髄損傷のみのコントロール動物に比較し、運動機能の有意な改善がみられた。組織学的に損傷軸索の再生も認められ、p75が再生阻害に関与していることがin vivoにおいて証明された。抗体による副作用の発現は認められなかった。以上の結果より、この抗体は中枢神経再生治療に応用できる可能性がある。