Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
最終年度である今年度は、平成14年度、15年度の二年間で行なってきた基礎的研究を基盤にして、後期思想を中心としたプラトンの知識論の全体像を提示する作業を行なった。具体的には、研究期間を四ヶ月ごとに三期に分け、それぞれにおいて以下のような作業を行なった。まず、第一期においては、過去二年間の研究成果を整理する作業を行なった。『テアイテトス』の内容分析や研究状況の再整理、『ソピステス』・『ポリティコス』において分割法が議論される文脈のテキストを分析し過去の解釈を整理し直す作業、『ピレボス』における存在論を巡る議論の分析と過去の解釈の再整理などを重点的に行ない、プラトンの後期思想における知識概念と存在概念の関係の解明を中心に基礎的な研究を進めた。続いて第二期においては、研究対象を中期対話篇に設定し、そこで展開されているイデア論の構造とその解釈を整理し直すとともに、後期思想との関連を調査した。具体的には、『メノン』における想起説の提示を巡るテキストおよび解釈の分析、『パイドン』におけるイデア論の議論を巡るテキストの分析、『国家』において提示されている、イデア論を中心とした存在論の枠組の詳細な分析などを行なうとともに、これらの思想がいかに後期思想へ展開していったかを、第一期における研究成果をもとにして、具体的に分析していった。これによって、中期思想から後期思想におけるプラトンの存在論の枠組が連続的であり、従来考えられてきたような根本的な断絶は存在しないこと、また、中期から後期におけるプラトンの存在論の議論は、知識(エピステーメー)論どの密接な関連の中で展開されていることを確認することが出来た。第三期では、初年度における初期思想の分析などとも総合して、プラトンの知識概念と存在論との連関の全体像を描き出す作業に従事した。
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国際シンポジウム報告書『風土と技術の近代』
Pages: 116-125