Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、エクスタシーをその実践と理論の核とするシャーマニズムとラカンの精神分析について、口頭伝承論の観点から、後継者育成のシステムと理論を中心に比較研究し、次のことを明らかにすることを目的としている。すなわち、エクスタシーが後継者の育成にどのように関わるのかについて、精神分析とシャーマニズムそれぞれがどのような理論を有し、かつ実践としてはどのように行っているのか、類似と相違を具体的・実証的に明らかにする。そして、「ことば」では伝達され得ないものを、いかにして後継者に伝達しようとしているのか、また実際にそのようなことがどこまで可能なのか、シャーマニズムと精神分析の可能性と限界について明らかにする。本研究をすすめる過程で、20世紀の両大戦間におけるフランスの精神分析・シュールレアリスム・民族学の相互の思想史的影響関係においてエリアーデの論とラカンの論とを考察することが重要であることに気づき、それぞれの領域と関係の深いミシェル・レリスを軸に調査・研究をおこなってきた。本年度は、3領域の思想史的状況を整理し、以下の点を明確にするための調査をおもにフランスにおいておこなった。(1)シュールレアリストたち(離脱者を含む)が、両大戦間にフロイト理論を参照してゆく過程(2)エリアーデの『シャーマニズム』(1949年)およびレヴィ=ストロースの『構造人類学』(1958年)において、シャーマンによる治療との比較という脈略で検討された「精神分析」の、同時代における治療技法の整理(3)エリアーデ的「エクスタシー」と、カイヨワやバタイユ、レリスなどの「エクスタシー」のとらえ方との相違、および、同時代のフランスにおけるエリアーデ的エクスタシー概念の位置。(4)(3)で考察した両者とラカンにおけるそれとの相違、および、個々の文脈におけるそれぞれの概念の射程範囲と意義
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