Project/Area Number |
14710027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
美学(含芸術諸学)
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Research Institution | Osaka Meijo University |
Principal Investigator |
加藤 素明 大阪明浄大学, 観光学部, 講師 (30330377)
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2002: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | プラトン / 神話 / 修辞学 / ミュートス / パウロ書簡 / レトリック |
Research Abstract |
本研究2年次は、新約聖書パウロ書簡『ガラテア書』を中心に据えた研究を行ってきた。『ガラテア書』は、本研究第1年次に明らかになった通り、統計的手法によって比較すると修辞法の用いられる割合が他の書簡よりも低い。しかし、その中味を調べてみるとギリシア・ローマの法廷弁論術に極めてよく似た構造を持っている。それは導入(1:1-9)・叙述(1:10-2:14)・提題(2:15-21)・論証(3:1-4:31)・勧告(5:1-6:10)結語(6:11-18)という手順をとるものである。また、その内容から判断して、古典修辞学で言うところの「助言的(審議的) deliberative」言説(アリストテレス『弁論術』1358b、キケロ『発想論』1.5他)に属する。これはBetzの註解書(Betz, H.D.Galatians.Philadelphia,1979)に指摘されて以来、パウロ書簡の修辞学的解釈が盛んに行われる端緒となったものであるが、同時に法廷弁論には通常存在しない勧告という概念を受け入れて良いか否かという議論を生んだところでもある。これについては、推奨(protrope)・制止(apotrope)といった要素が法廷弁論にもあり(アリストテレス『弁論術』1358b)、これが勧告の機能をなすと見なされ得る。また旧約聖書の修辞法にも助言的言説に勧告がしばしば用いられている。原口尚彰は本年1月、こうした20年余の論争を踏まえた点で日本初の『ガラテア書』註解書を公刊し(原口尚彰『ガラテヤ人への手紙』新教出版社,2004)、パウロ書簡がギリシア・ローマの修辞学と密接に関係していることを詳細に論証した。昨年のLongenecker等によるNarrative Dynamics in Paulの調査に続き、新約聖書の修辞学的解釈史は奇しくもここに一つの段階の区切りを迎えた。以上のような調査結果を基に、更にこれからこうした詩論の当否を検討する作業に入らなくてはならず、これをプラトンの作品研究にフィードバックするまでに若干の時間を要することになった。
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