Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
最終年度となる今年度は、前4世紀後半のアテナイの政治動向を、アテナイ政治史分析の基本的単位となる「政治グループ」の概念を用いながら多角的に考察するという研究目的のため、前年度に行なった、前4世紀後半に活動したアテナイの政治家・弁論家たちについての史料に即した検討を踏まえて、そうした政治家・弁論家たちが構成した政治グループを中心にアテナイの政治動向を考察するという課題に取り組んだ。本研究は、対象年代を前350年代と前340年代、そして前338年のカイロネイアの敗戦以降の3つの時期に分けて段階的に考察していくことを目標としているが、今年度は、前年度に集中的に行なった前338年以降の時期についての考察に引き続いて、政治グループの判別がより明確である前350年代と前340年代について重点的に考察を行ない、当該期全体にわたるアテナイの政治動向の変動を検討することを課題とした。スパルタやテーベ、ペルシアといった、アテナイの対外政策を規定する重要なファクターが複数存在した前4世紀前半に比べ、マケドニアが台頭する前350年代、そしてとりわけ、マケドニアとの関係が緊迫する前340年代には、対マケドニア政策という単一のファクターが基軸となって政治グループが構成されるようになったことを明らかにした。しかし、前338年のカイロネイアの戦いでマケドニアに敗れたことは大きな画期となり、マケドニアの覇権のもとでのアテナイの政治において、対外政策は能動性を失い、政治家間の個人的な要因が政策(=対マケドニア政策)やイデオロギーといった要因よりも大きな比重を持つようになるに至ったという結論を、前年度に行なった前338年以降の時期についての考察を踏まえて導き出した。
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史学雑誌 114-2
Pages: 36-58