Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
幼児の格助詞理解に関して三度の実験を行った。第一実験では、3歳児から6歳児を対象に動画を見ながら「誰がたたいたの」とか「誰をたたいたの」という文に関しての幼児の理解力を見た。その結果は、主格の格助詞に関しての正解率は年少児のグループでも9割に達したが、対格の格助詞に関しては2割程度であり、年長児でさえも7割程度にとどまるというものであった。この結果は昨年度の「言語入力がなくとも主格助詞の使用は易しい」また「対格の助詞に関しては複数の(肯定的・否定的)証拠が必要となる」という提案を言語理解の側面から支持するものと解釈できる。第二実験では主格「が」の意味・機能的な側面、すなわち新情報、焦点のマーカーといった機能を考慮し、刺激文に疑問詞の「誰」が含まれない文を使用した。「ライオンが押しました」とか「ライオンを押しました」のような刺激文と一致する画像を選ぶ動画選択法によって実験を行った結果、年少児でも対格の格助詞の正解率は40%位までのびた。これまでの実験において対格の助詞に関する理解力は低いのは、刺激文が文脈なしに使用されているのが原因ではないかと考え、第三実験では「ライオンをたたきました」の様な文に「山にかばがいました。すると…」というような文脈を示す文を与えてその影響を調べた。その結果、対格の格助詞「を」に関して文脈が与えられない場合は正解率が年少児で40%、年中児で60%程度にとどまっていたのが、文脈が与えられるとそれぞれ60%と80%付近まで上昇した。よって、幼児の格助詞理解力を判断するにあたっては、刺激文を単独で与えるよりも文脈の中で与えて判断する方が好ましいこと、また肯定的証拠、否定的証拠が格助詞の学習に与える影響においても新たに文脈という要素を考慮すべきではないかということが示唆されたと考えている。