Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、民訴法17条の「当事者間の衡平を図るための移送」を主な題材として、裁判所の手続裁量において具体的にどのような総合的判断がなされているか、これに対して当事者はどのように関与しているかを検討した。すなわち、裁判所の手続裁量への当事者関与の探求である。具体的方法として、まず、公刊された平成以降の移送事件(約40件)をリストアップしたのち、平成9年から14年までの約20件につき代理人弁護士へのインタビュー調査を、調査過程で情報提供を受けた未公刊の事件2件につき記録検討や事件傍聴の調査を、この2年間でほぼ終了した。このうち、双方に代理人がついている事件ではそのほとんどで双方の協力が得られ、多くの事件で関連事件を含む事件記録の複写提供を受けた。現在、この調査結果をとりまとめ、検討中である。この間、平成15年民訴法改正により、いわゆる専門訴訟対策として特許権等に関する訴えの管轄とその移送に改正が加えられたところ、本研究ではこの先取りともいえる事例も調査することができた。一方、同じく専門訴訟たる医療訴訟も、本調査対象のなかで一大類型をなした。専門訴訟では、どのように専門家の関与を得るか、すなわち専門家証人や鑑定人の所在をめぐって、管轄と移送が激しく争われるからである。さらに専門訴訟では、その後の本案審理の各段階で、専門家関与をめぐり裁判所の手続裁量とこれに対する当事者の関与、手続保障が問題となる。そこで、本年度調査では、調査対象リストのうち、とくに専門訴訟について、移送決定に至るまでの段階にとどまらず、その後の審理運営に焦点を当てた調査を行った。このほか、専門訴訟の実態調査として、現在係属中の医療訴訟につき、裁判傍聴、当事者から提供を受けた記録の検討、代理人弁護士と当事者本人、協力医師へのインタビュー調査も実施した。