Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
昨年度末に行われた台湾総統選挙を受けて、本年度は、90年代以降今日までにおける中台関係の全般的な動向と、冷戦後に焦点を当てた米中関係の概説に取り組んだ。第一の中台関係の動向に関しては、6月初旬に行われ準日本台湾学会において「『民主化』と『安保』のバランス-クリントン・ブッシュ政権期の米中台関係-」という学会発表を行った。この論文は、台湾における李登輝政権の誕生から2004年総統選挙までの期間において、アメリカ政府が台湾海峡の安定のためにどのような政策を展開してきたかを概観するものである。とくに、90年代に入ってからの大陸中国の経済成長と、台湾の民進党政権にまる総統選出は、アメリカ政府が70年代に予期した「台湾関係法体制」では予測し得なかった事柄であり、その意味でも、中台関係の新段階への突入とそれへのアメリカにコミットメントを明らかにしようとした。本学会発表は、元来は台湾学会誌に発表する予定であったが、期せずして明治大学政治経済学部のアメリカ研究班が編集する著書『アメリカの光と闇』(御茶ノ水書房、2005年)の1章として加えられることなり、3月末に著書が完成した。第二に上げた冷戦後の米中関係の概説であるが、本報告書執筆時点で、原稿提出を行った段階であり、印刷物として発表されるには、今ひとつの時間がかかりそうである。しかし、「『1972年体制』の綻び-東アジアの国際秩序と米中関係」と題する本論文は、先に挙げた「台湾関係法体制」が今日においてその解釈と意義の変更を余儀なくされている旨を書いたものである。中国の経済成長に伴って起こった予想以上の中台経済の相互依存、それに伴って中国自身がタカ派的態度による中台関係の解決を(放棄してはいないものの)声高に叫ばなくなったこと、そして、9・11テロ以降米中間の戦略的協調が浸透していること等によって、中台関係に対する米国のコミットメントの変容を検証したのである。また、この科研に直接ではないが、関連する研究成果として『比較外交政策-イラク戦争への対応外交』を明石書店より今年度出版した。
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