Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年度の課題は、(1)前年度の株式合作制試験の補充調査と(2)農村税費制度改革(農村部の租税公課制度改革)試験の実地調査を行うことで、中国型経済改革の実験的側面の実質を解明することだった。しかしSARS流行のため、夏期に予定していた実地調査を遂行出来なかったため、当初予定とは異なり、もっぱら文献資料から、農村税費制度改革が改革試験区でいかに展開されてきたかを理解するにとどまった。文献資料からわかる概要は以下の通り。まず税費制度改革の原型は、安徽省阜陽試験区や貴州省〓潭試験区などで、1993〜94年から始まっている。安徽省を中心として税費制度改革が本格化するのが2000年ごろだから、施行錯誤の過程は6〜7年という長期に及んでいる。当初の税費制度改革の内容は、(1)食糧の契約買付(合同定購)を廃止し、(2)農民が農業税と農林特産税(および附加)と「三提五統」などの費用徴収を一括して食糧現物で納め、(3)食糧部門による食糧販売代金は食糧部門と財政部門が決算を行い、税相当部分は県財政へ、各種費用相当部分は郷鎮あるいは村へと帰属させ、(4)農民は食糧現物を納付後いかなる追加的費用徴収を拒絶する権利をもつ、というものである。要するに当初の税費制度改革は、現行改革がもっぱら農民負担軽減を目的とするのに対して、食糧流通制度改革をも重要な目的としており、政策目的自体が異なっていた。農民負担軽減という目的にたてば、税金や費用の徴収方法上の改革措置のみでは不十分なことは明らかで、農村基層政権組織の合併や人員削減といった機構改革、基層組織に課せられた公共財・サービスの供給と財政収入との不均衡是正といった財政制度改革など多方面の改革が不可欠である。それらは現行税費制度改革の主要課題となっている。そこで当初試験案からどのように現行制度改革案への準展が図られたかを実証的に解明することが次年度以降の課題として残される。