Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、ENSOとインド洋の海面温度の年々変動が同期的であったり独立的であったりする特殊な関係について、インド洋における顕著な海上風の季節変動場との関係に注目して、その一見相反する関係を維持している物理機構を明らかにすることを目指す。その第3年目として、インド洋における海上風偏差が海面温度の年々変動に与える影響の季節的な変化を解析し、そのENSOとの関係について調べた。昨年度までの解析の結果、北半球夏期の海上風の年々変動成分について二つの主要なモードの存在を確認した。それぞれのモードの振幅とENSOの関係を比較すると、第1モードと第2モードのどちらが卓越するかによって、夏期インド洋海上風と太平洋の海面温度変動との時間的な関係に支配的な影響があることがわかった。今年度はさらに解析を進め、これらの対照的な偏差成分がダイポールモードの発達と密接に関係していることを明らかにした。ENSOとダイポールイベントが両方発生する年(ED年)とENSOが生じたにもかかわらずダイポールが発生しなかった年(END年)の違いは、ENSOがどの季節にオンセットするかに依存することが分かった。オンセットの時期によって、海大陸周辺での降水アノマリーや海上風の平均的な季節変動場と偏差場の関係が変わるために、海上風がSST変動に与える影響はED年とEND年の春季から秋季にかけて対照的となり、ED年とEND年の間にはインド洋の海上風偏差場と季節変動場との関係という系統的な違いがあることを示した。このように、ENSOとダイポールイベントの独立・従属関係について従来から対立する主張に対して、インド洋の海上風の季節変動に加えてENSOの季節的な発展の違いが重要な要素であることなど偏差場と背景場との関係に着目するという新たな視点を導入し、両者を矛盾なく説明可能な物理機構を提唱するという研究成果を得た。
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Journal of Climatex Vol.18(受理済み、印刷中)(発表予定)
京都大学防災研究所年報 第47号
Pages: 509-516
120002514968