Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
放射線照射した固体水素中に生成するイオン種の研究は1980年代から広く行われている。しかしながらその信号はこれまで観測されることがなかった。報告者は高純度固体パラ水素を用いた高分解:能電子スピン共鳴分光法を用い、放射線照射した固体パラ水素中に等価な4本線の信号を観測し、理論計算と比較検討した結果それらがH_6^+イオンであることを示した。またその後の研究から重水素分子を1%程度含むパラ水素固体において4本線が重水素の核スピンによりさらに分裂したH_4D_2^+のシグナルを観測することに成功し、上記の同定が確かなものであることが確認された。電子スピン共鳴信号強度から決定された固体水素の放射線分解によるH_6^+の収率は、赤外分光により決定された全イオン種のそれに極めて近い。この結果放射線照射により固体水素中に生成する主イオン種はH_6^+であることが強く示唆される。一方で水素ガスを放射線分解したときにできるイオン種はH_3^+であり、このH_3^+が宇宙空間における化学反応を支配する重要な化学種として広く知られている。今回の研究結果は固体中における放射線誘起反応が気相中におけるそれと大きく異なる典型例が、水素イオンという単純かつ主要な化学種においても引き起こされることを示したものである。報告者はまた低温固相中における化学種のエネルギー緩和を研究すべく、超短パルスレーザーを用いた固体クリプトン中におけるヨウ素分子の振動量子状態のエネルギー及び位相緩和をコヒーレント反ストークスラマン分光法により調べた。緩和速度を7〜40Kの温度範囲、1【less than or equal】19の振動量子状態において測定した結果、エネルギー緩和は4つのフォノンを瞬時生成する過程、位相緩和は固体中に既存するフォノンとの弾性散乱が支配的であることを示した。
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Physical Chemistry Chemical Physics 7
Pages: 776-784
Pages: 791-796
放射線科学会誌 79 (In press)
10015689669
Journal of Experimental and Theoretical Physics 99
Pages: 776-783