Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
大腸癌患者の糞便中の短鎖脂肪酸は、健常人に比べ、酢酸は有意な増加、酪酸は有意な減少を示すと報告されている。従来の大腸癌の検査法である便潜血検査は、早期発見の役に立たず、バリウム検査・内視鏡検査は、医師の技術で診断の正確さ、苦痛が大きく異なるなどの問題点がある。そのため、臨床現場では大腸癌の早期発見を行うための的確なスクリーニング方法の開発が熱望されている。従来、短鎖脂肪酸の測定にはガスクロマトグラフィーが用いられているが、前処理や誘導体化などの操作が繁雑であり、臨床現場での応用は困難であった。本研究では、すでに開発した「キノンの電解を利用した脂肪酸の高感度測定法」を基本として、臨床現場において有用な大腸癌の的確なスクリーニング方法を開発する。本年度は、昨年度確立した便中短鎖脂肪酸計測システムをヒト試料の実分析へと応用した。(1)木酢液およびpH調整剤の酸度測定ヒト便を試料として用いるのに先だって、便と同様に多種類の酸や有機物質を含む木酢液やpH調整剤を試料として用い、夾雑物による影響及び本法の特異性について検討した。木酢液とpH調整剤の酸度測定において本法と公定法による定量結果をそれぞれ比較したところ、よい一致が見られた。従って、本法は夾雑物の影響を受けずに短鎖脂肪酸の測定ができ、ヒト便中短鎖脂肪酸の分離定量も充分可能であることが示された。(2)ヒトの便中短鎖脂肪酸の分離定量昨年度確立した便の前処理方法はヒト便においても有効であり、9日間にわたって採取したヒト便中の短鎖脂肪酸の含量とその組成の変動をモニターすることができた。便中短鎖脂肪酸の総量は、平均値に対して±30%の範囲で変動したが、短鎖脂肪酸の組成はほとんど変化しないことが明らかになり、既に報告されている結果と類似していた。本法は、大腸癌発症に起因する便中短鎖脂肪酸組成の変動を充分にモニターできると考えられるので、スクリーニング法として有用であると思われる。
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J.Agric.Food Chem. 52・6
Pages: 1440-1444
分析化学 53・4
Pages: 271-274
分析化学 53・10
Pages: 1097-1000
110002905319