Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、植物の雑種ゲノムの安定化におけるトランスポゾンの役割を解明することを目的とし、コムギ植物を材料に、雑種ゲノムにおいて発現するトランスポゾン群の体系的な解析を行った。本研究の主な成果は以下の通り。(1)マカロニコムギ-タルホコムギ三倍体種間雑種における高頻度染色体倍加:マカロニコムギ(Triticum durum、2n=28、♀親)とタルホコムギ(Aegilops squarrosa、2n=14、♂親)の交配に由来する三倍体F_1雑種(2n=21)は、高い花粉稔性及び、自殖種子着粒率を示すことを見出した。さらに、細胞遺伝学的解析により、(a)この三倍体F_1雑種では、減数分裂の過程で非還元配偶子が高頻度に形成され、(b)雌雄の非還元性配偶子の合体により六倍体F_2雑種(2n=2)が生じることが明らかとなった。六倍体F_2雑種は、正常に成長し、高頻度(>90%)で種子をつける。従来、ペルシアコムギ(Triticum carthlicum)とタルホコムギの三倍体F_1雑種で、高頻度染色体倍加が起きることは知られていたが、マカロニコムギ-タルホコムギ三倍体雑種での高頻度染色体倍加は知られておらず、この発見は新規でる。この結果は、現在広く栽培されるパンコムギ(六倍体、2n=42)の母方の祖先がマカロニコムギである可能性を示唆する。(2)コムギ種間雑種におけるトランスポゾンの発現:マカロニコムギ-タルホコムギ三倍体F_1雑種とその自殖後代(F_2-F_3)の根、葉と幼穂からtotalRNAを抽出し、RT-PCR法により、copia型レトロトランスポゾンの発現の有無を調査したが、明確なトランスポゾン転写活性は、検出されなかった。
All 2004
All Journal Article (1 results)
Theoretical and Applied Genetics 109
Pages: 1710-1717