Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
開花サイズと成長 平成15年までに九州大学北海道演習林および宮崎演習林に設置した毎木調査プロットにおいて、開花の有無と個体サイズの計測を行った。また過去の計測から個体のサイズ増加量を算出した。個体の樹冠内光環境の幅の計測 平成15年に引き続き、北海道演習林、宮崎演習林において識別した各個体について、個体が置かれた光環境と樹冠の形成との関係を明らかにするため、樹冠内光環境の幅、すなわち樹冠頂端の葉と樹冠内でもっとも暗い葉の受光量を、光量子センサを用い計測した。また、それらの個体について、樹冠の深さ、シュートの伸長量、角度などの樹冠の形態に関わる量を計測した。樹冠構造の計測 昨年度より継続していた供試個体の刈り取りと器官量の計測を行った。樹冠構造モデルの構築 樹冠構造の変化によって個体の受光効率にどのような違いが生じるのか、そのコスト-ベネフィット関係について議論するため、樹木の非同化部/同化部バランスの変化と受光効率の関係を解析するためのモデルの開発を行った。解析とまとめ 上記のデータおよびモデルを用い、本研究における作業仮説の検証を行った。用いた種間には開花サイズに明確な差があった。遷移後期型の高木種と低木種の間において、光環境に対する樹冠の可塑性が最も大きく異なった。同じ種内でもサイズが大きな個体ほど、受光量の低下に対して節約型の樹冠形成を行う反応が顕著だった。この可塑性の幅は遷移後期型の高木種において最も大きかった。遷移初期種において、可塑性の幅が大きいものもあったが、これらの着葉限界光量は高く、光量の低下に対する成長の低下も大きかった。この可塑性は単に健全個体との成長差によるものであり、死亡を先延ばしにする機能を持つものではないと思われた。