Research Abstract |
1年目の継続研究に加え,2年目に計画した研究内容に対して、以下のような実績を挙げたので報告する。1年目から継続していた研究については遊離砥粒の大きさの影響(計画2)について調べた結果を報告し,2年目の研究については遊離砥粒による摩耗挙動について検討した結果を報告する。 計画2に対する結果として、遊離砥粒の大きさが木材の摩耗に与える影響に関しては、これま.で木材の固定砥粒による摩耗現象等で認められなかった遊離砥粒特有の特性を明らかにした。その結果、種々の針葉樹材および広葉樹材における木材の摩耗は、摩擦面に存在する微視的組織の影響を受け,針葉樹材では年輪や繊維に対して垂直方向に摩耗した条件が、広葉樹材では道管径と同程度のサイズの砥粒によって摩耗した場合に摩耗率が大きくなる条件が存在した。また、広葉樹材では、摩擦面に存在する道管の分布形態によって,遊離砥粒径の効果の現れ方は異なり、道管の分布形態が不均質な木材ほどこの効果が現れやすいこととが明らかとなった。このような知見は、床材料等に使用される比較的表面硬度の高い広葉樹材において、樹種によって耐摩耗性が異なる貴重なデータになりうる。本成果の一部は,第16回国際木材機械加工セミナーにおいて発表したので、さらにその全体をまとめて専門雑誌に投稿する予定である。 さらに,本研究課題の成果を通して得られた遊離砥粒による摩耗挙動の知見をまとめて,摩耗のモデルの適用を試みた。摩耗モデルの適用には、まず切削に関与する砥粒の情報が必要であったので,本情報を調べるため新たな摩耗試験の手法を確立し,その成果を国際誌Journal of Testing and Evaluationに投稿し受理されている。さらに,これらの因子を用いて摩耗量を予測するためのモデル式の誘導を2つ試みた。現段階で砥粒の押し込み情報から予測するモデルは成功し、もう一方の切削情報から予測するモデルを検討中である。
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