Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseシスト形成過程を明らかにする事を目的として昨年度に単離した、交配型間でmRNA蓄積量が異なると予想される9種類の遺伝子の発現を、新たに2つのクローン培養株を構築して調べた。その結果、交配型間で明確に発現が異なった遺伝子は、AT4-3およびAT8-4の2種類のみであった。それら遺伝子のcDNA全長を決定した結果、AT4-3およびAP-8-4はそれぞれ、131および414残基のアミノ酸をコードしている事が予想された。これらの配列を相同性検索に供したところ、AT4-3では既報のものとの相同性は見出せなかったが、Ar8-4の一部領域が、既報の生物種の脂肪酸不飽和化酵素と相同性を示した。また、これら演繹アミノ酸配列をタンパク質二次構造予測ソフトSOSUIを用いて解析した結果、AT4-3はシグナルペプチドをN末端側に有する事が予想された事から、分泌性のタンパク質であることが示唆された。また、AT8-4は膜結合型のタンパク質であることが予想された。次に、増殖過程におけるmRNA蓄積量の変化を調べた結果、AT4-3は対数増殖期と比較して定常期の細胞でmRNA蓄積量が多い傾向がみられた事から、有性生殖への関与が示唆された。さらに、AT4-3を発現ベクターpET-15bへ組み込んで大腸菌に形質転換させることにより、AT4-3の発現タンパク質を得る事ができた。また、細胞の接合には糖タンパク質が関与する事が予想される事から、糖タンパク質の合成を阻害する2-deoxy-D-glucoseがシスト形成に及ぼす影響を調べた。その結果、濃度に依存してシストの形成が阻害された。さらに、異なる交配型の細胞由来のタンパク質を糖鎖染色を行い調べた結果、交配型特有の糖タンパク質を確認する事ができたことから、本種の接合にも糖タンパク質が関与する事が示唆された。