Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
RalはRasファミリーGたんぱく質の一つで、Rasにより活性化される。最近、エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、フィロポディアの形成に対するRalの関与が示唆されつつあるものの、詳細な分子機序は未知の点が多い。そこで生きた細胞内でRal活性化の時空間的な制御機構の解析を通じて、Ralの生理的機能を知るために、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を利用したモニター分子を作製し解析した。モニター分子の構造はYFP、RalA、RalBP、CFP及び膜局在化配列からなる。この分子を発現する293T細胞可溶化液のFRET効率を蛍光分光光度計で測定したところ、GTP結合率とFRET効率が正の相関を示した。従って作製したモニター分子はRalの活性化をFRET効率の上昇として検出できることが確認できた。次にCOS1細胞において上皮細胞増殖因子(EGF)依存性のRalの活性化を多重蛍光タイムラプス顕微鏡で観察し、FRET効率を画像化して解析したところ、EGFによって生じる葉状仮足に限局してRalが活性化していた。この結果はRalの活生化に関し初めて得られた時空間情報である。さらに、EGF刺激によるRal活性化の機構を詳細に検討した。Rasの優勢劣性型変異体を発現した細胞では、Ralの活性化が抑制されていることから、EGF依存性のRal活性化にはRasの活性化を必要とすることが確認された。しかし、Rasの活性化は葉状仮足で高いが、必ずしも葉状仮足に限局するわけではないので、葉状仮足の形成もまたRalの活性化に必要であることが示唆された。実際、優勢劣性型変異体のRacを導入して、EGF依存性葉状仮足形成を阻害すると、Ralの活性化は阻害された。すなわち、増殖因子依存性Ralの活性化は複数の経路によって制御されていることが明らかとなった。
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