Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では健康診断データを用いて、糖尿病発症をエンドポイントとするコホート研究を行い、飲酒の糖尿病発症に及ぼす影響とBMIレベルとの関係について検討した。対象者は1991年度から1998年度の間に健康診断を受けた者で、1)35歳以上の者、2)慢性膵炎の既往がない者、3)糖尿病の臨床的診断を受けたことがなくかつ空腹時血糖値が7.8mmol/l未満の者とした。糖尿病発症は1999年度の健康診断までに糖尿病の臨床的診断を受けた者、または空腹時血糖値7.8mmol/l以上となった者とした。解析はBMI22.0 kg/m^2をカットオフとした2つのサブグループ別に行い、相対危険度の推定にはPooled logistic regression modelを用いた。フォローアップ期間は平均5.7年間で264人の糖尿病発症者が観察され、飲酒者の非飲酒者に対する相対危険度は、BMI【less than or equal】22.0kg/m^2の集団では3.19 (95%信頼区間1.09-9.37)、BMI>22.0kgm^2の集団では0.58 (0.40-0.86)で、BMIと飲酒の交互作用項のP値は0.003であった。BMI>22.0 kg/m^2の集団で飲酒が糖尿病発症に対し予防的に働くという結果は、平均BMIの高い欧米を中心とした集団における研究結果とよく一致する。一方、BMI<22.0 kg/m^2の集団でリスクを増加させるという結果は、日本の研究結果と一致し、このような結果が偶然である可能性を低くした。日本人は米国人と比べ平均BMIが低く、米国では検討されえない低いBMIベルでこの交互作用が起こっている可能性がある。日本のような平均BMIの低い集団において正しい健康施策を確立するため、糖尿病発症における飲酒の影響についてさらに信頼できるエビデンスが必要とされている。