Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
これまで我々は、Fibroblast growth factor(FGF)-7が動物モデルで消化管上皮の杯細胞の増生作用を示すことから、FGF-7が消化管上皮の杯細胞への分化誘導作用をもつのではないかと考えその解析をおこなってきた。その結果、FGF-7がヒト大腸癌細胞株HT-29のサブクローンであるH2株において、杯細胞分化のマーカーであるムチン(MUC2)やIntestinal trefoil factor(ITF)の発現を誘導すること、FGFレセプター(FGFR)を介した細胞内シグナル伝達により分化を誘導された細胞ではFGFRの発現が減少するという、FGFRを介した分化誘導シグナルのネガティブフィードバック機構が存在することを明らかにした。消化管において杯細胞は、粘膜防御因子として知られるITFやMUC2の産生を通じ粘膜防御に働くと推測されている。FGFRからのシグナル伝達と粘膜防御という観点から我々は、近年消化管粘膜の防御作用が報告されているFGF-10に着目した。FGF-10はFGF-7と同じFGFRからのシグナル伝達を誘導し、マウスではその投与により消化管の杯細胞数が増加する。我々はFGF-10からのシグナル伝達は増加した杯細胞によるITFの産生を介して粘膜防御に働くのではと考え、ITFノックアウト(KO)マウスを用いたDSS腸炎モデルによりその検証を試みた。その結果、野生型マウスではDSS腸炎を誘発してもFGF-10投与により炎症の治癒傾向が認められたが、ITFKOマウスではFGF-10の効果は認められなかった。以上の結果から、FGF-10によるシグナル伝達も消化管における杯細胞の分化を誘導し、ITFの産生促進によって粘膜防御に働いている可能性が示唆された。
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