Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
川崎病は小児期に発症のピークがあるいまだ原因不明の全身性の血管炎であり、その予後は心臓の後遺症、特に冠状動脈病変の有無に左右される。心臓に後遺症のある患者は注意深い経過観察が必要である。一方、心臓に後遺症のない患者については特別な注意は必要ないが、血管炎の後であるため成人期以降に動脈硬化の危険因子となる可能性が指摘されている。しかし本当に心後遺症のあきらかでない患者が動脈硬化の危険因子となるというはっきりしたデータは現在、存在しない。一方、電子ビームCTは非侵襲的に冠動脈の石灰化を描出可能であり、成人の冠状動脈の動脈硬化のスクリーニングとして用いたとの報告は多い。今回の研究では電子ビームCTを川崎病既往患者に施行し、冠状動脈病変を持たない患者において冠状動脈の石灰化が認められるかどうかを検討することを目的とする。その頻度が正常コントロール群と比較し有意に高ければ川崎病は明らかな冠状動脈病変がなくても成人期の動脈硬化の危険因子であるということができる。山口大学小児科および関連病院で経過観察中の川崎病既往患者22例に電子ビームCTを施行したところ、冠動脈瘤で経過観察中の1症例に冠動脈の石灰化を認めたが、冠状動脈病変を指摘されたことのない症例では冠状動脈の石灰化は認めなかった。現在までの症例の検討では冠状動脈病変のない川崎病既往患者に冠状動脈の石灰化は認めておらず、動脈硬化の危険因子であるという積極的なデータは得られていない。しかし、症例数が限られており、また発症後10〜20年の経過時点でのデータであるので、更なる症例の蓄積および長期のフォローアップが今後の課題といえる。