Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ES細胞から有毛細胞への分化誘導には、これまでに報告されている神経系細胞に分化誘導できるようなfeeder細胞を用いる方法で行い、ES細胞との共培養、あるいはfeeder細胞の培養上清を用いてES細胞を培養するなどの検討を行った。ES細胞とfeeder細胞との共培養では、中胚葉系の細胞に分化誘導してしまうが、一方でfeeder細胞の培養上清を用いた場合、高効率にES細胞を外胚葉系細胞に分化しうることがRT-PCR法による遺伝子解析の結果明らかとなった。さらに、その外胚葉系細胞群をcloningした結果、有毛細胞特異的遺伝子の発現が確認でき、また有毛細胞の分化に特異的なマーカータンパク質や転写因子を免疫染色法により検出できたことから、この手法が有毛細胞様細胞に分化誘導可能な新規誘導方法となりうることが明らかとなった。また、マウス初代培養有毛細胞を成体および胎児の蝸牛より採取し、上皮細胞系培地や神経細胞系培地、または様々の添加剤(ホルモン、成長因子)を加えた培地にて培養を行うことができるか否かの検討を行った。また培養基材の観点から、表面に様々な細胞外マトリックスをコーティングすることで細胞の接着性、増殖性についての検討も行った。培養・増殖できた培養細胞系については、RT-PCR法により感覚器細胞特異的遺伝子を調べた結果、有毛細胞の前駆細胞と思われる細胞群の存在が明らかとなった。現在、このような細胞群と先に記したES細胞から分化誘導した細胞とを細胞融合させ、より高増殖能を有する有毛細胞の作製を試みている。