Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
現在まで我々は、樹状細胞と腫瘍細胞による融合細胞を用い、腫瘍特異的免疫反応の誘導および免疫寛容の観点より検討を行ってきた。特に、アロ反応を利用した免疫能増強効果に関して研究を行った。昨年までの研究により、DBA/2マウス由来の扁平上皮癌細胞株(KLN205)と同系(DBA/2)及び異系(C57BL/6)マウスの骨髄より採取された樹状細胞から融合細胞の作製に成功し、腫瘍及び樹状細胞由来の細胞表面抗原は融合細胞表面に発現されることを確認した。しかし、KLN205細胞が発現する腫瘍特異的抗原は不明であるため、腫瘍抗原としてMUC1を選択し、KLN205細胞に遺伝子導入した際の、融合細胞を作製させた際の融合細胞におけるMUC1の発現に関して検討した。その結果、KLN205細胞に遺伝子導入されたMUC1は、腫瘍細胞表面での発現を認め、融合細胞表面にも発現されることがフローサイトメトリーで確認された。腫瘍と同系もしくは異系の樹状細胞より作製された融合細胞のアロ反応によるT細胞の免疫誘導能増強効果を調べるために、MLR(Mixed Lymphocyte Reaction)を行い、同系および異系融合細胞の刺激による効果について比較検討した。その結果、同系融合細胞とT細胞の共培養による刺激よりも、異系融合細胞による刺激の方が、明らかにT細胞の増殖を誘導することがわかった。また融合細胞とT細胞を共培養した際の培養液中に含まれるIL-2をはじめとするサイトカインの分泌も、異系融合細胞との共培養の方が、有意に亢進していた。今後は、腫瘍と同系もしくは異系の樹状細胞より作製された融合細胞の持つ腫瘍特異的な細胞障害能を検討し、アロ反応によるT細胞の免疫誘導能がどのように影響するか追求する方針である。