Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
角膜は日常的に紫外線に曝され、恒常的にDNA障害を受けると考えられる。一方、ヒト角膜内皮の遺伝子発現プロファイルの解析から、紫外線DNA障害の修復因子の一つであるDDB2(damaged DNA-binding protein 2)が特異的に発現することが明らかとなっている。角膜内皮におけるDDB2の機能解析を行うにあたり、我々はDDB2の選択的スプライシングの派生体を複数同定した。本年度はこれらDDB2派生体の同定と機能解析を行った。まず、HeLa細胞からRT-PCR法を用いて、選択的スプライシングにより生成される4種のDDB2派生体(D1-D4)を単離した。これらの予測分子量はそれぞれ、41kDa、28kDa、18kDa、27kDaであった。FLAGタグを付加した派生体タンパク質をHeLa細胞にて発現させ共焦点レーザー顕微鏡にて細胞内局在を検討したところ、すべてが核に局在した。これらのタンパク質をそれぞれ発現させた細胞を用いて、UV照射による障害DNA修復活性をELISA法にて検討したところ、野生型DDB2を導入細胞ではDNA修復は促進されたが、特にD1およびD2ではDNA修復活性はコントロール細胞より抑制される傾向が認められた。UV照射前後の細胞核内における局在では、野生型は障害DNA部位に凝集するが、D1およびD2派生体では凝集が認められなかった。またUV障害DNAを用いたゲルシフトアッセイでは、野生型がDNA-タンパク質複合体に結合するのに対し、D1およびD2派生体では複合体への結合が認められなかった。以上よりDDB2派生体D1、D2はDNA修復において抑制的に作用することが示され、またその作用機序はDNA障害部位への直接的な結合ではないことが示された。来年度は、これら派生体のDNA修復抑制における作用機序についてさらなる検討を深めると共に、培養角膜内皮細胞を用いて、DDB2高発現時のDNA修復を検討する予定である。