Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前年度までに、T.forsythensis (B.forsythus)におけるS-layer遺伝子の欠損変異株を作製するためのプラスミドを作製し、数種類の制限酵素処理後の泳動パターンにより目的のプラスミドであることを確認していた。そこで、今年度はそのプラスミドを用いて、実際にS-layer欠損変異株を作製し、関連遺伝子領域の解析および機能分析を行う予定であった。T.forsythensisと、目的のプラスミドを含む大腸菌、およびヘルパーとなる大腸菌RK231を、N-アセチルムラミン酸添加血液寒天培地にて好気条件下、37℃で、18時間接合させた。回収後、N-アセチルムラミン酸添加血液寒天培地(ゲンタマイシン200μg/ml、テトラサイクリン1μg/ml)に拡げ、嫌気条件下、37℃で14日間培養した。しかし、変異株は得られなかった。そこで、方法を変更し、S-layer遺伝子をクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子に置換することとした。この結果、(a)230kDa蛋白質をコードする遺伝子のみを置換した変異株、(b)270kDa蛋白質をコードする遺伝子のみ置換した変異株、および(c)その両遺伝子を置換した変異株を得ることができた(SDS-PAGEおよび制限酵素処理後のDNAの電気泳動によって確認済み)。現在までに、血液寒天培地上でのコロニー形態観察、グラム染色による細菌形態観察、ネガティブ染色による細菌形態観察を行い、特筆すべき変化は認められなかったが、透過型電子顕微鏡にて(a)(c)においてS-layerの完全な欠損、(b)においてほぼ欠損していることが確認できた。今後、各細菌の病原性およびヒト細胞を用いた付着実験を行っていく予定である。