Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
最近我々は、抗凝固作用を持つ血管内皮特異的な血管内皮プロテインCレセプター(EPCR)が、いくつかの腫瘍由来のヒト細胞株や乳癌組織にて高頻度に発現していることを見出した。組織染色にて、乳癌、胃癌、胆嚢癌などに発現がみられたが、中でも乳癌の場合はほとんどの症例で陽性であり、癌細胞で発現しているEPCRが、腫瘍形成、浸潤、転移などに何らかの形で機能していることが示唆される。この腫瘍細胞のEPCRの発現が癌診断に有益となるのではないかと考えて、血中可溶型EPCRの測定を確立し、現在種々の癌患者の血中濃度を測定し、癌のマーカーとなりうるのかどうか検討を進めているところである。腫瘍形成におけるEPCRの機能としては、APCがMMP-2を活性化することが報告されており、癌細胞上のEPCRがAPCを介してMMP-2を活性化し、癌の浸潤、転移を導いているかもしれない。我々はin vivoにおいて、ヌードマウスにEPCR陽性の腫瘍細胞株を移植した際に、抗EPCR機能阻止抗体投与による腫瘍形成能への影響を見ているが、抗EPCR機能阻止抗体による特異的な腫瘍の縮小効果が得られた。癌の浸潤、転移は生命予後を決める上で大変重要な因子であり、EPCRを標的とした新しい画期的な治療法を開発したい。また、上記のように血中の可溶型EPCRの測定が可能となり、本来EPCRは血管内皮に特異的に発現しているので、癌以外の血管病変との関連についても検討している。その結果、可溶型EPCRは正常では検出されないが、一部の膠原病における血管炎で上昇している傾向がみられた。従って、様々な病態での血管内皮障害時には、血中の可溶型EPCRが上昇している可能性が考えられる。今後は、可溶型EPCRの測定が血管内皮障害の検出のために有用であるかも検討したい。
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