Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、平成14年度において、月経周期が正弦波状運動時の呼吸循環、体温などの各種生理機能の応答に及ぼす影響を検討した結果、心拍数の振幅応答性は卵胞期より黄体期の方が低く、体温維持能力は黄体期の方が低い傾向があることを明らかにした。安静時の自律神経バランスは月経周期に伴って変動し、黄体期には副交感神経活動度が低く、交感神経活動度が高まることが示唆されている。自律神経バランスの変化は運動時の各種生理機能の調節に影響するであろう。このようなことから、本年度は、正弦波状運動時の各種生理機能の応答に対する自律神経バランスの影響について検討することを目的として、一般女性6名に運動強度が酸素摂取予備量の10〜60%間を正弦波状に変化する運動を卵胞期と黄体期に各1回行なわせ、心拍数、心臓副交感神経活動レベルの指標である呼吸性不整脈の大きさ(一呼吸毎)などの応答を両期間で比較した。運動は8分周期で、続けて4周期行った。各測定項目について、1運動周期に対する平均応答曲線を求め、振幅および運動負荷曲線からの位相遅れ時間を計測した。主な結果は以下の通りである。1.正弦波状運動時の心拍応答について、月経周期による振幅の差は、主に心拍数の最低値が黄体期に高まることによって生じた。2.正弦波状運動時の呼吸性不整脈の大きさの振幅応答は、黄体期に小さく、それは主に呼吸性不整脈の大きさの最高値が黄体期に低下することによって生じた。3.位相遅れ時間は、心拍数と呼吸性不整脈の大きさのいずれにも月経周期の一定した影響は認められなかった。以上のことから、月経周期による心拍応答性の差の少なくとも一部は、運動時の自律神経性調節の変化によることが推測された。