Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ナノ秒のパルス幅を持つイオンビームを応用した飛行時間型の散乱イオン分析法(TOF-RBS)を開発するにあたり、入射ビームの最適化を行った。これまでにビームアパーチャーの端部よって小角に散乱されるビーム成分が試料周辺部からの後方散乱事象を引き起こしスペクトルを歪めることが確認された。ビームを直径1mm程度に絞る際に金属製のアパーチャーを用いているがこのアパーチャーの端部で小角に散乱されるビーム成分があり、これが角度の広がりを与えることが判明した。このビーム成分は総電流量に対して100万分の1ほどの量だが、軽元素の分析では断面積の違いから周辺部からの散乱の影響を無視できない。この問題を解消するため2段のアパーチャーを用いてビームスポットを絞ることにした。ビームプロファイルの測定ではビームの軸方向に向かってSi半導体検出器を近づけ、角度の広がりならびに、エネルギーの広がりを測定した。2段のアパーチャーの使用により角度の広がりは低減することができたが、ビームのエネルギー分布は低エネルギー側に広がる成分がより多く発生することがわかった。これは散乱イオンのエネルギー分布にも影響を与えるために望ましくないことが分かった。またアパーチャーの厚みを5ミクロンと5mmのもので比較を行ったが、厚いアパーチャーでは10keV程度の低エネルギー部までわたるブロードなエネルギー分布が生じた。ビームの角度方向の広がりはアパーチャーの配置を試料直前に配置することで解消されたが、検出器が十分な後方角を取れないのでアパーチャー形状を円筒状にするなどに工夫を施した。これらについては原子力学会ならびに原子力学会分科会にて報告した。最後にこの研究期間を通して、ベリリウム、リチウム、炭素等の軽元素を対象としてパルスイオンを用いたTOF-RBS法を適用することにより高分解能で高感度の分析が可能であることが確認された。