Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
Thermus thermophulus HB8由来アセチルオルニチンアミノ基転移酵素(AcOAT)について、基質結合様式を決定するために基質アナログとの共結晶化を行った。種々のアナログで結晶化を試み、構造解析を行ったが酵素に結合した複合体を得ることができなかった。そこで補酵素であるピリドキサール5'リン酸と基質アミノ酸であるアセチルオルニチン、およびグルタミン酸のシッフ塩基を還元した補酵素-基質アナログを作成した。目的酵素を一旦アポ化した後、この補酵素-基質アナログで再構成したものの構造解析を行うことにより、それぞれの基質に対する結合様式を明らかにすることができた。AcOATは、多くのアミノ基転移酵素に見られるような基質結合時におけるopen-Closed変化は見られず、活性部位に存在するアミノ酸残基の側鎖のコンホメーション変化のみが生じていた。AcOATはアセチルオルニチンに対してはδ位のアミノ基、グルタミン酸に対してはα位のアミノ基の転移反応をおこなうため、それぞれの基質に応じて厳密な結合認識機構が働かねばならない。今回の構造決定により、AcOATはグルタミン酸側鎖がコンホメーションを替えることにより2つの基質の結合をうまく調整していることが判った。Thermus themophulus HB8由来アルギノコハク酸合成酵素(AsS)は、ATPを利用して、シトルリンとアスパラギン酸からアルギニノコハク酸を生成する反応を触媒する。そこで、ATPの代わりにAMPを、またシトルリン、アスパラギン酸の代わりにアルギニンやグルタル酸などのアナログを用いて種々の構造解析を行った。またさらに、基質をソーキングした結晶の構造解析より結晶中で酵素反応が非常にゆっくりと進行することが明らかになったため、ソーキング時間の異なる数種の結晶のデータを測定しそれぞれの構造決定をおこなうことができた。