Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究により、スピン吸収効果による、多磁区構造の高精度な制御技術を確立するうえでの、重要な指針が得られた。本課題で作製する素子は、非磁性体とスピン吸収体の接合界面のうち、上面からスピン吸収効果が生じているものと想定していた。しかしながら、スピン吸収体の側面からもスピン吸収効果が生じていることがわかった。側面からのスピン吸収効果の検証は、スピン吸収体の膜厚に対する、スピン吸収効率の大きさを評価することで行った。実験は、横型スピンバルブ素子を作製して行った。スピン吸収体の膜厚が異なる4種類の素子を作製し、スピン信号の減衰率を評価することで、各素子におけるスピン吸収効率を評価した。実験結果は、強磁性体の膜厚が増大するにつれて、スピン信号の大きさが減衰しているのがわかった。これは、スピン流がスピン吸収体の側面からも吸収されていることを示唆している。一方で、スピン吸収体の有効断面積が40nmに達したところで、スピン信号の大きな減衰が確認された。この原因として、スピン吸収体からのスピン散乱効果が生じている可能性を検討した。スピン散乱の効果を検証するため、スピン吸収体をスピン流伝搬経路から分岐させた位置に配置した素子を用いて、同様の実験を行った。スピン吸収体の膜厚が異なる6種類作製し、スピン信号の減衰率を、理論式でフィッティングすることで、スピン吸収効率の膜厚依存性が一致することを確認した。実験結果は、膜厚が60nm以下の範囲では、理論式と一致した。これは、膜厚が60nm以下では、スピン流はスピン吸収体からの吸収効果からの影響しか受けていないことを示唆している。以上の結果から、スピン吸収体をスピン流伝搬経路内に接合した場合、スピン流の一部は散乱を受けることを結論付けた。一方で、膜厚が80nm以上の範囲では、理論式との一致を示さなかった。この原因究明は今後の課題である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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