Research Abstract |
本研究は,病原性という表現型により細菌を分類し,それら表現型に寄与する遺伝子群を全遺伝子の網羅的解析により抽出しようとするものである.具体的には,入手できる全遺伝子を対象とするのではなく,まず第一段階として同属同種異株として5株のゲノム全配列が得られるA群レンサ球菌をターゲットとし,遺伝子の保存性,特異性にとどまらず,tRNA,遺伝子間領域にいたる多岐にわたるデータをバイオインフォマティクスの手法と分子進化学的手法を駆使することで,徹底的に比較解析をおこなった.その結果,全遺伝子の約81%の遺伝子が保存しており,各株に特異的な遺伝子群が,ゲノム中に取り込まれているファージに集中している,ヒアルロン酸分解酵素などの遺伝子であることが明らかとなった.分子進化学的解析からは,付着に関する遺伝子において,保存されている遺伝子群とは異なり株間で多様化が生じていることが明らかとなった.さらに,Synteny解析により,SSI-1株において,一部のファージ領域の相同性により、ゲノムレベルでのアレンジメントが生じていこることが明らかとなった.これらの情報は申請者が構築した細菌ゲノムのサーバーにて公開されている.また各株にお串ける病原性との相関解析から,劇症型の疾病が,これら特異的な遺伝子群と関係があることが示唆できた.さらに,ファージの相同性を原因とするゲノムレベルのリアレンジメントによりそれら遺伝子群が構造単位で組換わることも,本病原菌における劇症株の出現と何らかの関係があることも示唆できた.また,病原性データベースに関しては,特徴的な病原性に関するデータベースは作成完了し,平成15年度の合同班会議にて発表した.しかしながら,文献から抽出した全情報をデータベース化しようと試みたものの,非常に多くの表現型から構成される点,および病原性という曖昧な定義が原因で,効率の良いデータベース作成が困難であった.現在,血便という病原性に関与している3型分泌装直に焦点を絞った解析にて論文を執筆中である.
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