Research Abstract |
本研究では,地殻の弾性波速度変動を精密に検出する手法を開発するため,精密制御震源が設置されているサイトを利用して観測実験を行い,データを取得し,これの解析を行った.また,精密制御震源を利用して効果的に弾性波速度変動を検出するには,従来の一定周波数を出力するだけでは不十分で,これにAM(Amplitude Modulation)変調を施すことが有力な手法であることが分かったので,AM変調をするための装置の開発を行った. 本研究に先行する科学研究費の補助により,精密制御震源は従来とは桁違いの高精度の調和波動を長期間にわたり連続的に地殻へ放射できることを既に確認している.また,VLBI相関法アルゴリズムを取り入れるためには,各観測点が超高精度で同期している必要があるが,これのためのインフラとして光ケーブル網は既に敷設ずみである.また,AM変調をする震源本体の試作は既に終了していた. 本研究では,まず,既設の精密制御震源と各観測点を光ケーブルを介した通信により同期して観測実験を行い,精密制御震源が生成する調和波動を観測する実験を行った.観測波形を解析したところ,精密制御震源が生成する調和波動を高精度に検出することができた. 次に,各観測点で得られたデータを解析するためのVLBI相関アルゴリズムの開発を試みた.具体的には,各観測点間における観測波形データの相関処理により,地盤の相対的な変化を抽出することを試みた.現在のところ,精密制御震源の電源供給の問題で24時間までしか連続運転ができず,また観測データが不足しているが,観測波形の相関性は極めて高く,また時間安定性も高いことが分かった.地盤の状態変化に伴う速度変化の影響を受けたと思われる弾性波動の変化は検出できていないが,この手法の精度高さを考慮すると、地盤に何らかの変化があれば,それに伴う観測波形の変動を検出できるものと期待できる.今後も観測を重ね,変化を高精度に検出することを試みる予定である. 上述の観測・解析と並行して,AM変調ができる精密制御震源の開発を進めた.AM変調は,精密制御震源の回転体の一次モーメントを変化させることにより行うが,震源の試作機を実験室でテストし,機械的にスムーズに変化させることができることを確かめた.また,一次モーメントを変化させる機構および制御部の製作も完了した.ただし,震源への電源供給の目処がたたなかったため,テストサイトへの設置はまだである.
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