細胞内共生Wolbachiaによるフタトゲチマダニの産雌性単為生殖発現機構の解明
Project/Area Number |
15658092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Applied veterinary science
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
藤崎 幸蔵 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (00292095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄 学南 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (10292096)
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Project Period (FY) |
2003 – 2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥3,800,000 (Direct Cost: ¥3,800,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Keywords | マダニ / 共生微生物 / Wolbachia / 遺伝子断片 / 単為生殖 / PCR |
Research Abstract |
我々は、フタトゲチマダニに両性生殖系と単為生殖系の2系統が存在し、前者が西日本を中心に、また後者が東日本を中心に分布しており、その地理的分布には相違が存在することを1970年代に明らかにするとともに(Fujisaki et al.,1976)、過去20数年の間において、国内の牧野からは次第に両性生殖系のフタトゲチマダニが姿を消失し、現在、放牧牛からは専ら単為生殖系のみしか採集されないという、生物学的に極めて興味ある事態の推移があることを発見した(藤崎,1990ほか)。一方、節足動物の細胞内共生リケッチアであるWolbacinaは、1960年代に蚊(イエカ)の細胞質不和合性の原因であることが判明し、1990年代に入り寄生蜂など多くの昆虫の「性を操る」特異な微生物であることが知られるようになった。しかし、培養が困難なことや、電顕以外には形態を観察する方法がないなどの理由によって、PCR法が開発されるまでは、Wolbachiaの詳しい性状はほとんど不明であった。また、マダニ類では、フタトゲチマダニ以外には単為生殖する種がほとんど知られていないこともあって、Wolbachia寄生と生殖における不和合性の関係がこれまで注目されることはなかった。しかし、最近、我々は吸血中のOrnithodoos moubata雌の卵巣細胞内にWolbachiaと考えられる共生微生物多数を電顕観察によって認めるとともに、Wolbachiaの遺伝子断片をPCR法によって検出することに成功した。一方、疾病媒介能欠損トランスジェニック・マダニは、マダニ媒介性疾病の研究推進と防圧手法の開発面から大きな期待が寄せられているものである。しかし、この実用化のためには、人為的に導入・変換した遺伝形質(例えばBabesia原虫媒介に関与するマダニ中腸細胞表面の接着物質遺伝子のノックアウトやノックインなど)を、自然界に棲息するマダニに効率的に伝搬できるための優れたvehicleが不可欠となる。自然界においてマダニに細胞内共生し、垂直感染することによってマダニの「性を操つる」Wolbachiaは、このためのvehicleとして理想的な特性を備えていると考えられ、本研究のもたらす意義は、フタトゲチマダニの単為生殖機構の解明にとどまらない。 平成16年度においても、我々が1960年代から現在に至るまで全国内各地で採集し液浸標本として保存している両性・単性のフタトゲチマダニを用いて、nested PCRによる遺伝子(16SrRNA)断片検出によるダニ体内のWolbachia感染の状況を検討したが、目的とするWolbachiaの遺伝子断片は確認されず、結局、Wolbachia寄生と生殖における不和合性の関係を明らかにするには至らなかった。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)