Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
カルシウム/カルモデュリン(Ca/CaM)依存性プロテインキナーゼカスケードは、CaMKI,CaMKIVおよびそれらの活性化酵素であるCaMKKにより構成され、中枢神経では神経活動に伴った軸索伸展調節や遺伝子発現調節などに関与すると考えられる。CaMKKにはαとβの2つのアイソフォームが存在するが、その細胞内分布や機能に関する詳細な報告は少ない。私はラット培養海馬神経細胞を用いて、CaMKKαが細胞質と核の両方に、一方βは細胞質のみに存在していることを、(1)活性の測定、(2)免疫ブロット、(3)免疫染色、以上3つの手法により明らかにした。(1)組み換えCaMKI変異体を作成し、これをCaMKK活性測定用基質とした。培養海馬神経細胞を破砕し、細胞質と核それぞれの抽出液を得、それぞれに含まれるCaMKKのCa依存性および非依存生活性を測定した。その結果、細胞質分画からはCa依存性および非依存性両方の活性が、核分画からはCa依存性活性のみが検出された。またそれぞれのCa依存性活性はグルタミン酸刺激により変化しなかったが、細胞質のCa非依存性活性は刺激により統計上有意な増加を示した。COS7細胞にCaMKKαおよびβアイソフォームをそれぞれ発現させて、その細胞抽出液中のCaMKK活性を測定したところ、CaMKKα発現細胞の抽出液にはCa依存性活性のみが、β発現細胞抽出液からはCa依存性及び非依存性両方の活性が検出された。(2)上記(1)において得られたラット培養海馬神経細胞の細胞質及び核抽出液に対し、CaMKKα及びβのポリクローナル抗体を用いて免疫ブロットを行った。その結果、αは細胞質と核の両方より、またβは細胞質のみから免疫反応性が得られた。またグルタミン酸刺激によって、各分画におけるそれぞれの相対量は変化しなかった。(3)メタノール固定した培養海馬神経細胞に対し、(2)で用いたポリクローナル抗体によって免疫染色を行った。CaMKKαの免疫反応性は細胞質と核の両方から、CaMKKβは細胞質のみから検出された。(まとめ)以上の結果より、ラット培養海馬神経細胞において、Ca依存性活性のみを示すCaMKKαは細胞質と核の両方に、またCa依存性及び非依存性活性の両方を示すCaMKKβは細胞質にのみ存在することが示された。細胞質には主としてCaMKIが、核にはCaMKIVがそれぞれ存在することが報告されており、CaMKKアイソフォームの分布の相違は、活性化する下流の酵素の相違を生み出している可能性を示唆している。以上の結果の一部は現在、論文投稿準備中である。
All 2004 Other
All Journal Article (5 results) Publications (1 results)
Journal of Pharmacological and Experimental Therapeutics 311(3)
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Tissue Engineering 10
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Neuropsychopharmacology 29
Pages: 1831-1840
European Journal of Neuroscience 19
Pages: 2281-2287
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