Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
インドネシア西スマトラ州のパダン工業貿易研究所において、現地の研究協力者と共に室内実験装置を作成し、ゴム工場2次処理水、そしてキャッサバ加工工場排水について平成15年-平成17年にかけて処理試験を行った。その結果、いずれの汚水についても、汚水負荷量を500・1000L m^<-2>d^<-1>で処理した場合、BOD、COD、TSS(総懸濁物質)はほぼ90%以上除去できた。キャッサバに含まれるシアン化合物については送気により除去率が高められ、送気8時間では汚水中の濃度1.90-7.58mg L^<-1>に対して除去率81-100%であった。現地土壌・資材による汚水処理は可能であり、コストや維持管理の点から実用的であると考えられた。パダン市近郊の産業排水の放出による水環境汚染への影響を調べた結果、1-2次処理が行われず排水が直接河川へ放流される豆腐工場やキャッサバ加工工場よりの排水の質が悪く周辺水環境への影響が懸念された。しかし、比較的工場の規模が小さく(家庭単位での工場が多かった)排水量は少なかった。ゴム精製工場からの排水は活性汚泥法による2次処理水であるが、処理は不十分であり排水が放流されている地点の河川水質は上流よりも明らかに有機物、窒素が高かった。また、下流の海水が混合する河口付近では塩類による有機物などの凝集蓄積により河川の汚れがひどくなっていた。汚水の発生源での処理について、一般家庭での個別処理は非常に困難であるが、今回調査対象とした産業排水や学校や役所など排水が多量にでる発生源での点源処理が現実的な対応かと考えられた。これらの研究成果を研究協力者(パダン工業貿易研究所)により地域に紹介してもらっていたところ、パダン市のとなりのパダンパンジャン市より学校と市庁の雑排水あるいはトイレ排水の処理に土壌式の浄化法を適応できないかとの打診を受けた。今後、現地でパダン工業貿易研究所に主催者となってもらい行政、地域住民など水環境汚染に関心のある関係者を対象としたセミナーを開催し、水環境に関する教育およびパイロットスケールから実装置の規模の水処理施設の設置を目指したい。