Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
アポトーシス(プログラムされた細胞死)の誘導による癌細胞の除去を目的とし、最終段階で働くプロテアーゼであるcaspase-3を光機能化し、その活性を光照射によって制御すること方法の確立を行った。Caspase-3はアポトーシスシグナル伝達の上流にあるプロテアーゼcaspase-8による特異的な切断(セリン176残基)により活性化されたため、この特異的な切断位置に光分解性の2-nitrophenylglycine(Npg)をペプチド主鎖に導入し光化学反応により活性の発現を試みた。ヒトcaspase-3のS176への位置特異的なNpg基の導入は、4塩基コドンと細胞外翻訳反応によって行った。Npgを導入したcaspase-3を用いて、光照射(366nm、0℃)を行い、基質であるDEVD(Asp-Glu-Val-Asp)の分解[(DEVD)2-rhodamine110で測定]を用いて活性を見た。光照射前(0min)では活性は見られないが、1分間の光照射で酵素活性の回復が見られた。caspase-3阻害剤(DEVD-CHO)の添加によってその活性が抑制されたことからこれらの活性がcaspase-3に由来することが確認された。次にcaspase-3の持つ自己切断と活性化の抑制について検討した。天然型では時間に依存して徐々に活性が増加するが、Npg-caspase-3では自己活性化は抑制され、光照射によって天然型と同様の自己活性化能を回復することが明らかとなった。このことから、Npgの位置選択的な導入によって、caspase-3の活性の制御が可能であることが明らかとなった。この結果、細胞内への光機能性caspase-3が導入と光照射によって、アポトーシスの誘導が可能性となると考えられる。これらの光機能化したcaspase-3を細胞に侵入可能にするため、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)のTAT配列(YGRKKRRQRRR)をNまたはC末端に導入した光機能性caspase-3を上記と同じ方法で合成した。Npg導入によるcaspase-3活性の抑制及び光照射による活性化は、TAT配列を導入していないものと同様に制御できることが明らかとなった。これらの合成したTAT配列の導入されたNpg-caspase-3をヒトのT細胞(Jurkat T cell)内に効率よく取り込ませる実験と光照射によるアポトーシスの誘導を行うことができる環境が現在までの研究で整った。
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